花鳥風月はひふへほ

埼玉県在住ニートの日記みいななにか。

「アメイジング・グレイス」プレイしました

愛しの君へ 明けない聖夜の祝福を―

 

というわけで、きゃべつそふと作

アメイジング・グレイス -What color is youattribute?-』をプレイしました。

シナリオゲーかつクリスマスゲーですね。かなり面白かったです。

以下、雑感を書いておきます~。

 

※ネタバレ注意


1.リアルとファンタジーの交点としての「芸術」
 プレイヤーからみて、この物語の世界観に関わる謎は、大きく二つあると思います。
一つは、主人公たちがいる「町」は、一体なんなのか?もう一つは、なぜ主人公はタイムリープをするのか?の二つです。

 このうち、前者についてはかなり徹底的に真相が明かされます。造成に至る具体的な経緯や運営方法そして北海道足寄町オンネトー湖近辺という現実の場所まで明示されています。それら真相に超法規はあっても超自然はなく、あくまでプレイヤーがいる世界と同一世界での出来事として語られています(特に調べてませんが、個人的には、この手のゲームで、「東京」とかの超有名どころ以外の現実の地名をそのまま出すのかなり珍しい気がします)。徹底的に「リアル」路線です。

 一方で、タイムリープの真相にあるのは、「ファンタジー」です。祈りやりんごなどのタイムリープ発動の条件は示されますが、それらでタイムリープの「原理」が説明
されているわけではないです。描写的にタイムリープは、超自然的な奇跡と考えるのが妥当です。

 そして、この作品のメインの題材である「芸術」は、町という「リアル」と、タイムリープという「ファンタジー」の、二つの交点に存在しているように思われます。芸術のド素人としてあえて独断と偏見で語らせてもらえば、世の中の芸術作品を、「リアル」と「ファンタジー」のどちらかに区分することはナンセンスで、両方に区分される存在である、と言えると思います(あるいは、作品ごとに区分できる場合があっても、結局は「芸術」の中で、私たちの「リアル」を表現したものなのか、それともあくまで空想上の「ファンタジー」を表現したものなのか、という区分の「境界線」をどこにも設定できません)。

 

「リアル」な謎を抱えた町と「ファンタジー」な謎を抱えたタイムリープ。一見すると大風呂敷を広げまくった物語に思えますが、そこで芸術という題材がさらに風呂敷を広げるように見せかけて、実際は上手く接着剤として機能し、世界観をまとめている、と思いました。

 


2.ユネの祈り
 ユネは祈りガチ勢ですね。絵画しかない空間に一人ぼっちで長い期間を過ごす羽目になるわけですが、フツーなら発狂ものでしょう。凡人ならば、主人公がまれに帰ってきたら、行かないでくれ!と泣き叫び引き留めて、挙句は町のことなんか放り出して脱出を試みるでしょう。

 そうならなかったのは、ひとえにユネがガチ勢だからです。

 あと、主人公への好意が最終場面までほとんど見て取れないことも祈りの強さを表しているかもしれません。作中語られるように、ユネは主人公に好意を持っていたはずですが、それらしき伏線はほぼなく、唐突に告白へ至る感があります。

 これも(あくまでも)祈りの強さの前には、好意というには小さな問題だったのかもしれません。もし、解決前に想いに気づかれて、主人公が関係がギクシャクしたら一大事ですし、想いが通じ合っても互いが互いに対して気を配り過ぎて全体を考えての行動が鈍る可能性があります。

 奇跡を起こせるレベルの祈りは半端な代物ではありませんから、問題解決後に突如として告白になるのもまあ納得です。

 他に、ヒロインの話と言えば、この作品はメインヒロインはどっちか論争の作品でもあります。どうにも、「周回していることを知らないユネ=表メインヒロイン」、「サクヤ=裏メインヒロイン」、「周回している最後のループのユネ=真メインヒロイン」という感じがしますが(優柔不断)。

 しかし、まあ、サクヤとユネはかなりの好対照な感じがします。「主人公への積極的に好意を見せるサクヤ」対「最後までほとんど見せないユネ」、「他人に振り回されて能動的に動かざるを得ないサクヤ」対「自ら運命の変革を望みつつも受動的な甘んじざるを得ないユネ」、「時間に閉じ込められるサクヤ」対「空間に閉じ込められるユネ」…。

 弓と矢という関係だから、対照的になるのは当たり前かもしれませんが、もし、ユネとサクヤが逆の立場に立たされていたらどんな物語になるのかちょっと気になります
(まあ、物語として成立しないかもしれませんが)。
ひとまず、ユネが祈り始めたループ以降は、「ユネの世界におけるサクヤの物語」、としておきましょうか。

 あ、一応は私はユネ派です!(と言いつつ「キスをする」を選択するスタイル)。

 

 

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ユネ(左)とサクヤ(右)。アーケード付き商店街なら雪の日も安心して買い物ができますね。

 

3.作品のテーマ
 作品のテーマというか(学校の国語のテストみたいですが)作者が伝えたいことと言えば、「あなたにアトリビュートと言えるものはありますか?」かと思います(サブタイトルの「What color is your attribute?」とほぼ同じですね……)。 
アトリビュートattribute)は、西洋美術において伝説上・歴史上の人物または神話上のと関連付けられた持ち物。その物の持ち主を特定する役割を果たす。持物(じぶつ)ともいう。ウィキペディアなわけですが、作中の最重要ワードと言えるでしょう。

 おそらく、どうしても、誰がどんなアトリビュートなのかに注目してしまいますが(多分、絵画を鑑賞するときはそれでいいのですが)、作品のテーマを考えたときには、その登場人物の、「アトリビュートへの思い」、が重要になってくる気がします。コトハの絵画を代表として、各登場人物にアトリビュートに該当するものはあるかもしれません。しかし、重要なのは、作中でも語られるそれぞれのアトリビュートへの当人たちの思いやその背景かと思います。

 各人のアトリビュートは、必ずしも社会的に大きく評価・認知されたと言えない場合も多々あり、本来的には、「まだ」、アトリビュートと呼べないかもしれません。しかし、登場人物たちのアトリビュートへの思いは本物です。そして、記憶を失った状態のためアトリビュートと言えるものが全くない主人公は、各登場人物のアトリビュート的なものとそれへの本物の思いに触れ、自分の才能・力のなさを感じ、又、自分が出来ることはなんだろうか?と考えていきます。

 一歩踏み込めば、主人公を通して間接的に、プレイヤーに対して「あなたにアトリビュートと言えるものはありますか?」と問いかけているように思えます。

 まあ、私自身、自分を象徴するものが何かと聞かれたら、主人公よろしくかなり返答に窮しますねえ。私含めて、芸術で描かれるような、すごい出来事に遭遇した人や凄まじい特技がある人はフツーそんなにおらず(ゴロゴロいたら困る)、だからといって、俺たちにアトリビュートはありません!!!……にならないで、各登場人物のように自分が思いを込め自信を持って語ることが出来るなにかがあるか?という感じでしょうか。

 

余談ですが、What color is your attribute? のcolorには、「色」の他に「個性・持ち味」、「音色」等の意味もあるみたいです。「あなたのアトリビュートは何色ですか?」と直訳もまったくもってありですが、「あなたのアトリビュートの持ち味は何?」、「あなたのアトリビュートはどんな音色?」といった訳もありな気がします(もっとも、私は芸術以上に英語は素人なので完全に間違っているかもしれません。ちなみにグーグル先生に訳してもらうと「あなたの属性は何色ですか?」です)。

 

4.その他

 絵もBGMも大好きですが、好きだからこそもう少しどちらも欲しかったところです。あと、アフターはユネとサクヤで、もう少しそれぞれ話が分かれて欲しかったです。(分量としては十分にあります。まあ、半額セールで買ったのであまり文句は言えません)。

 リリィ先生の声には、意見が随所で出ているようですが、私は結構好きです。でも、一番好きなキャラは、キリエ。この作品に限らず、混沌とした物語で、一直線に駆け抜けるタイプは好きになりやすいですかねえ(印象として銀河英雄伝説のビッテンフェルトみたいな感じですかね。なんかたとえが変ですね…)。

なお、一番惹かれるキャラはユネ(好きと惹かれるの違いは……よく説明できません!)。

 

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コトハ(左)とキリエ(右)。何気にこの一枚絵は何度も登場する気がする。

 

時間が取れたら、「さくらの雲*スカアレットの恋もプレイしてみたいです~。

それではみなさん、メリークリスマス!……ではなく、良いお年を!